看護師便り

東京都済生会向島病院、看護部のブログです。看護師が交代で日々の出来事や想いをお届けします。

看護師便り 晴耕雨読 Part2

2024年06月13日

梅雨の季節になりました。
以前もこの時期に『晴耕雨読』として看護師便りを書かせていただきました。

小さい頃から本が好きでした。最近は通勤途中で本を読んでいます。読んだ本の中で印象に残った1冊をご紹介させて頂きます。

有川ひろ先生の本で、タイトルは『明日の子供たち』(幻冬舎文庫)です。
養護施設に転職した若者が先輩職員らに囲まれて成長する日々がつづられるこの小説は、養護施設に入所していた高校生が養護施設のイメージを変えたいと思う思いを有川ひろ先生に手紙で送ったことから生れています。
私もこの本を読んで施設に対するイメージが変わり、他の人にも伝えたいという気持ちを抱きました。

「親と一緒に暮らせない=かわいそう」というイメージを抱いている人が多いと思います。
手紙を書いた高校生は小さい頃に、母親から育児放棄と虐待を受け児童養護施設に入所しています。
学校に行かず、家の用事をしていたそうですが、施設に入所することによって学校に行ける、三食食べられるなど安心して生活できる場所を得ています。
親と一緒にいても安心した生活ができない子供たちがいる。必ずしも「施設入所=かわいそう」ではないということがよくわかりました。
自分の身の回りでも親の虐待によって幸せではない状況や命の危機が起きているのかもしれないという意識を持ち、場合によっては通報する勇気も必要だと思いました。

またこの本の中で、施設に入所している高校生が本によって救われた場面が出てきます。本を読むことによって他の人の疑似体験ができる。
このことは、経済的に余裕のある人が幸せであるとは限らない、貧乏だからって不幸とは限らない。
いろいろな価値やものの考え方を知る機会になり、自分の境遇に対しても活路を見出せるようになったように思います。

今はスマホがあればどんな質問にもすぐに答えてくれる便利な時代になりました。
しかし、情報の偏りの懸念もあります。
他者に対する偏見や差別はいたるところにあります。
一人一人が視野を広げ、他者の違い、長所を認めることができたら、もう少し生きやすい世界になるのではないかと思います。

雨の日に本を広げてみませんか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

書籍情報:有川ひろ 『明日の子供たち』 幻冬舎文庫

書影の掲載にあたり、幻冬舎様よりご許可をいただきました。
ありがとうございます。

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