看護師便り

東京都済生会向島病院、看護部のブログです。看護師が交代で日々の出来事や想いをお届けします。

看護師便り 「転ぶ」ことの現実と、未来を想像する

2025年05月15日

人間が転ぶということは、転んだことがない人がいないように、あまりにも当たり前のことなのですが、高齢者の転倒は、転倒による外傷や心的トラウマなどによりQOLに大きく影響するといわれています。

入院する患者さんの中には高齢の方も多く、身体機能の低下や、認知機能の変化、環境要因など、転倒の要因は複雑に絡み合います。そのため私たちは、患者さん一人ひとりの状態に応じた見守りや環境整備を行い、未然に防げるよう努めています。しかし全ての患者さんの行動を予測することは難しく、転倒を完全に予防することは簡単ではないと感じます。

そんなとき、ふと思いました「無重力の世界なら、誰も転ばないのに」──と。無重力というのは宇宙のことで夢のような話に聞こえますが、最近では、「宇宙での生活」が現実に近づいているという話題を耳にするようになりました。1969年にはじめて人類が月面着陸に成功し、1990年代末からは各国が参加する国際宇宙ステーション(ISS)が建設され、人類は宇宙に「滞在する」時代となり、医学や物理学、生物学など多分野にわたる実験が継続的に行われています。2000年代に入ると、宇宙開発は国家プロジェクトだけでなく、民間企業の参入によって、宇宙輸送のコストを大幅に削減し、宇宙旅行や民間人による宇宙飛行の実現へとつながっています。そしてNASAが主導する「アルテミス計画」は、2020年代半ばに人類を再び月面へ送り、将来的には月面基地の建設や長期滞在を目指しています。また、月を中継地点として火星への有人探査も視野に入れられており、宇宙は「探査の対象」から「人類の新たな生活圏」へと変わりつつあるそうです。このような話を聞くと、いつか月や宇宙で看護する日がくるかもしれない・・・と考えずにはいられませんでした。

近代看護を築いたフローレンス・ナイチンゲールがいたらどんなことをしただろう・・・。根拠をもって患者の体も心もケアするという看護の原点を作り上げ、統計学、病院建築、衛生管理、教育、執筆など、様々な分野で成果を上げた彼女なら、宇宙で看護するのに何を準備するだろう・・・。妄想は尽きませんが、夢のある未来を願いつつ、前向きに取り組んでいきたいと思っています。目の前の課題に向き合い、対策を講じつつ、科学や技術の進歩も活用した新たな仕組みの構築を目指していきたいと思います。

いつか転倒が問題ではなくなる未来を夢見て・・・

 

生成AIで制作

*フローレンス・ナイチンゲール(1820–1910)*

近代看護の母として知られ、クリミア戦争での看護活動により多くの命を救いました。衛生改革に尽力する一方で、統計学にも精通し、データを視覚化し、看護の重要性を社会に訴えました。看護師であり、統計学者でもあった彼女の功績は、医療現場における科学的アプローチの礎となっています。

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